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サナギとサナギで、pupaの話 第3回 堀江博久×高橋幸宏(前編)
2008年6月11日
堀江さんといえば、自身のバンド、ニール&イライザの他にも、鍵盤奏者として、LOVE PSYCHEDELICO、Cocco、木村カエラ、くるり、MASTER LOW などのサポートで知られる売れっ子ミュージシャン。
しかしながら、pupaメンバーで親交のあったのは幸宏さんと権藤くんのみ。そのふたりとも、2002年のSketch Showライブがきっかけとなって以来のおつきあいでした。今回のpupaに至る布石は、すでに6年前に打たれていたということですね。
昨年のミカバンド・プロジェクトにも深く関わった堀江さんは、今回のプロジェクトの推進者のひとりであることはもちろんですが、もっとも多くの(レコーディング以外の)濃密な時間を幸宏さんとともにしたといいます。
レコーディング以外の時間って? 濃密な内容って? 答えは本文にありますよ。
「高野さんの声って官能的ですよね。できれば僕が歌ったことにしてもらえませんか?」
高橋 堀江くんとは、Sketch Showのライブ以来のつきあいだけど、去年のミカ・バンドでもレコーディング、ライブ両方につきあってもらって......。
堀江 僕は、このレコーディングで、ロックの洗礼を受けました。
高橋 洗礼って?
堀江 ミカバンドの軽井沢のレコーディングの経験は今でも鮮明に、自分の頭の中に焼きついていて。スタジオに入る前はみなさん、普通なわけですけど、音を出した瞬間、ロックになるんですよ。「ちょっと音を出してみようか」って言って、プレイが始まった途端にビシッと本物のロックになる。そのスイッチがすごいなぁと思って。そしてセッションが終わった後は、いつのまにかみなさんお酒を飲まれるわけですけれど。そこでキーボードダビングする怖さと、普段の加藤さんの会話が、ホントなのか冗談なのかわからないし。(笑)。
高橋 小原とふたりで真剣に高中の演奏のディレクションとかしてるのに、後ろでマンドリンかなんかをジャカジャカ弾いてて、「だから、うるさいんだってば!」って僕らに怒鳴られて、って感じで。まあ、あれはあれで楽しいんだけど(笑)。
堀江 おふたりが、だんだん加藤さんの話を聞かなくなるんですよ(笑)。
高橋 だってくだらないんだもん。ほんっとくだらない(笑)。
堀江 でも、スタジオの中は超怖かったですよ。
高橋 何が(笑)?
堀江 レコーディング中の会話とかがもう20代の人どうしが会話してるようで......。第一、全員呼び捨てじゃないですか。
高橋 まぁ「加藤」とは言わないけどね。トノバンはトノバン。さん付けはしないね。あとのみんなは高校生の頃と同じになっちゃう。
堀江 加藤さんは別ですけど、幸宏さん、高中さん、小原さんの三人の会話が、お互い呼び捨てで言い合うんですよ。もうほんと怖いですよ。すごい貴重な体験でしたけど。高校時代とか大学時代のことを、昨日のことのように話せるっていう、その感覚がすごいと思ったし。
高橋 (笑)腐れ縁みたいなものですよ。
堀江 今まで、僕は、ああいうレコーディングっていうのをあまり経験したことがなくって。みなさん、それぞれ自分の曲を持ち寄って始まったわけですけど、他のメンバーの意見が入ってくると、やっぱり、その人の思い通りにはなかなかいかないじゃないですか。でも、いろんなやりとりを経て、最終的にはかっこいい音になっていくっていう。みんなが納得するかたちで。なんか、ほんと軽井沢レコーディング('07年ミカ・バンドの最初のレコーディング)は、男の中の男レコーディングっていう感じで。僕自身、あのレコーディングで得たものはすごく大きくて。......でも、お酒の量はほんとすごかったですよね(笑)。
高橋 ロックンローラ的な。pupaとは対極にあるよね(笑)。レイドバックしてますからね、あっちは、かなり。
堀江 違いますね。対極ですね。対極だけれども、すごい魅力的でした。みなさん、色んなキャラクターの持ち主で、個性的で、でも、まとまるところは、しっかりまとまってっていう。カエラもいたから世代も離れていたけど、ミカバンドのすごさというか......。サウンド以外にも会話やスタイルやファッションの中に、常にバンドのにおいがしっかりあって。
高橋 おまけに僕は音楽的には抵抗しつつやってたところがあるし......。
堀江 抵抗勢力だった(笑)。
高橋 違う風を吹き込む役だったんじゃないかと思う。高中とは別の意味でね。
堀江 僕は2002年以降では、幸宏さんのドラムを一番近くでよく見てる人だと思うんですよね。で、いつも驚くのは、すごい音がでかいんですよ(笑)。
高橋 痩せてるけど......わりとマッチョなの(笑)。
堀江 みんなに訊かれるんです。幸宏さんのドラムどうだった?って。「幸宏さんのドラム音って実はでかいんだよ」っていうと、やっぱみんな驚きます。でもホントに音が、バシって......。
高橋 ミカ・バンドのレコーディングのときの高中くんの感想が、「幸宏のドラムの音、あんなうるさいと思わなかった」ってそれだけだもん(笑)。
堀江 いや~、でも、あのレコーディングはすごかったですよ。僕はなんか、あのときの空気感っていうのを、どうしても今回のpupaに持ち込みたかった。僕はバンド幻想が人一倍強くて、20代の頃は自分のバンドもありましたけど、それ以外に、もう、いろんなバンドに参加したりとか、アーティストのサポートとして参加したりとかって生活だったので、今回、幸宏さんにバンドを組むから一緒にやらないかって誘われたときは、だから、すごい嬉しかったです。はい。
高橋 堀江くんには、ミカ・バンドのときにいろいろ相談乗ってもらったりして、僕にとってはとてもやりやすかった。それに、あのときも、夜、酒を飲みながら一緒に聴いてたのは、わりと最新の音ばっかりだったし、話題ももっぱらそっちの方向で。
堀江 そうですね。MERZとか聴いたり。
高橋 psappとか、あの辺のアーティストが最近ちょっと変わってきちゃってさ......、みたいな話をしたり。そういう話をできるのが堀江くんだけだったし。だから、新しいバンドをやろうと思ったときは、すでに堀江くんは僕の構想の中にいた。あとはやっぱりキーボードの人が必要だなっていうのはあったので。でも、堀江くんは "キーボードキーボード"してる人じゃないんで、たぶん全体のこともわかってもらえるだろうし。「やる以上はmorr musicを目指しましょう」なんてことも言ってくれたから。
堀江 そうですそうです。
高橋 でも、実際にレコーディングやってみたらさ、「高野さんの歌ってるこの曲、僕が歌ったってことにしてもらえないすかね」とか言ってるし。
一同 (爆笑)
高橋 何を言っているのかなと思ったの。そしたら、「これは若い子にモテますよ。モテ声だ」って(笑)。そういうところにこだわるんだよね。モテるかモテないかが重要(笑)。
堀江 「Tameiki」っていう曲があって、高野さんが歌を入れたあとくらいかな、それを聴いて、「ああ、これいいなぁ」と。純粋にいいなと思ったんです。この声、欲しいなと思って。
高橋 たとえば、僕らが行きつけのお店なんかで飲んでるときに、その曲をかけてもらうじゃない。そうすると、「幸宏さん、これ、俺が歌ってるって言っていいすか?」なんて言い出すわけ(笑)。まわりの女の子たちに、高野くんが歌ってる曲を自分が歌ってるってことにしたいって言うのね。「ばれるよ?」って言うんだけど(笑)。「もしかしたら若い子で高野くんのことを知らない子もいるかもしれない」って。つまり、堀江くんがイメージしているのはそのくらいの若い子なんだよ、ハタチそこそこの(笑)。高野くんじゃなくて、僕の声じゃだめなの?って聴いたら、「幸宏さんの声は、すぐばれちゃうからダメ」なんだって(笑)。
堀江 すみません......。(笑)いつもそんなことばっかり考えてるんです。歌うのはニール&イライザ以来ですね。久々に歌いました。えーと、8年ぶりくらいなんですけど、自分のボーカルというのは、なかなか客観視できないですね。......それにしても、いいんですよねぇ、高野さんの声......。ぞくっとします。なんかその、ありますよね、高野さん独特の......。
高橋 僕はほら、昔から知ってるからもう慣れちゃってるんだけど。
堀江 なんか官能的な感じっていうか。
高橋 ああ、それはあるね。
堀江 なんかこう、エロチックな感じが。
高橋 僕は彼の曲、その曲調から、それをいつも感じる。
堀江 そうなんですよね、はい。それもね、こう、スウィートなっていうのともちょっと違うんですよ。エロチックっていうとちょっとあれだけど......官能的?
高橋 『夢の中で会えるでしょう』とか聴くと、そういう感じがするよね。
(後編に続く)
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